多田の郷愁風景

新潟県畑野町<港町> 地図 <佐渡市>
 町並度 5 非俗化度 8  −廻船の寄港により船宿が多く立地した−




多田の町並 旅館建築が多く見られる



 佐渡島南東部、河内川という小さな川の河口付近に開けたわずかな平地に多田
(おおだ)の町並が開けている。
 古くからの港は、付近では東外れの松ヶ崎に置かれていたが、江戸後期の天保の頃になると多田港に寄港する廻船も増え、その頃から繁栄をみた。
 港町としての機能は松ヶ崎港と住み分けされていたようで、松ヶ崎には廻船問屋が多く台頭し、商業の町であったのに対し、多田は船宿が多く、船乗りたちが滞在し休息するところであった。
 その様子は現在町並を歩いても感じることができる。町並として展開するのは海岸線に沿った50mほどの街路沿いと、橋向いの河内川に沿った付近のみで小規模である。ただ前者を中心として、旅館を思わせる建物が密度濃く残っており、町並景観としても独特のものといえる。二階部分に木製欄干を持つ家、軒下の持送りに格子戸が保たれた旧家。旅館や商店として現役の頃の屋号を記した木の板を玄関先に掲げている姿も見られる。遊興地的な色を帯びていたものかどうかは定かではないが、それを想起させる佇まいでもある。中でも河内川沿いに残る「河口屋」の屋号を掲げた建物は大柄で格式を感じさせる。
 歩くだけなら数分ほどで訪ね終わる小さな町並であるが、濃厚に凝縮されたような家並であり、意識して保存してもらいたいものである。
 












訪問日:2017.04.30 TOP 町並INDEX