中戸次の郷愁風景

大分市中戸次【商業町(在郷町) 地図
 
町並度 5 非俗化度 5 −日向道に沿い商業が発達した−






中戸次の町並




 戸次(へつぎ)地区は大分市南部の田園地帯で、阿蘇や宮崎県境に源を発する大野川流域に開ける比較的低平なところに位置し、豊肥本線や国道10号線などの幹線交通にも恵まれる。都市近郊にあってこの中戸次地区には、藩政時代からの町の結構がよく残り、今なお古い町並として語り継ぐに足るものを保っていた。
 町並としてのまとまりを見せる地区は中戸次・戸次本町で、かつては戸次市村と呼ばれ、臼杵藩領であった。藩の高札場も置かれていたという領域の重要な拠点で、日向(現宮崎県)に通じる街道にも面していたことから人馬の通行も多く、自然発生的な町場が発展していたらしい。
 在(郷)町として藩の指定を受け、江戸末期にかけて商業町として賑わいを増していった。「何品によらず交易自由」とされ、近隣の農産物がここに集まり、取引をされまた各地に散っていったのだろう。
 風情のある町並は国道10号から分岐する街路沿いに、約500mに渡って残る。切妻・妻入の姿を基本としながら、屋敷型の旧家、そして海鼠壁の土蔵など様々な建て方の家屋が通りに面する。穏やかな曲線を繰り返す街路で、家々が鋸の刃状に雁行しているのが面白い。 
 町のほぼ中央にひときわ大きな構えが見え、小さな木戸に鍵が掛かっていなかったので内部に入ると、広い前庭越しに重厚な数棟の家屋、そして古井戸などが眼に入った。内部は一般公開もされているらしく展示物も見える。早朝であったので見物することは出来なかったがこれは大庄屋を務めていた帆足本家の邸宅である。農村集落であったこの町でいち早く商業を興し、長らく酒造家として町のシンボルであった。
 




(上二枚)帆足本家




帆足本家付近の町並


町ではこの帆足本家の屋敷群を整備するとともに、街路に面した土蔵を喫茶店として活用している。街路に立つと、この付近の建物の並びが、街路の曲りに沿って土蔵の白壁が適度に妻部を見せ、いい町並風景を醸している。ここをはじめ、古い町家、商家の建物を素材を活かしながら保存して行こうという意向が伺えて、好ましい町並だった。



訪問日:2006.08.15 TOP 町並INDEX