日吉津の郷愁風景

鳥取県日吉津村【農漁村集落】 地図
 
町並度 5 非俗化度 9 −近代的な商業地や温泉地に隣接する農村集落−
 




 
 



 
日吉津(富吉)の町並 
 


 日吉津村は県の西部、日本海に面し周囲を米子市に囲まれた面積の狭い自治体である。西側は日野川に沿い、川を挟み皆生温泉と向い合っている。
 中心部の富吉地区はかつて今村と呼ばれ、半農半漁の村として生計を立ててきた。江戸期は鳥取藩領で、幕末頃に藩は蝋の原料となるハゼの木を栽培することを推奨し、日野川畔に櫨並木が形成された。また一帯では綿花の栽培も盛んに行われ、それにより藩財政を潤した。
 また漁業は主に沿海漁業で鰯漁が盛んだった。当時は鰯の需要はほぼ肥料としてであり、漁船や漁網を商う者、また紺屋が1軒あったとの記録もあり、わずかながらも商業が行われていた様子がわかる。
 明治10年富吉村と改称した。同12年の記録では家屋179軒、800名弱の人口を有していた。また船舶24、人力車17との記録もある。
 村内のメイン道路である国道431号に沿っては複合商業施設も見られるなど、個性のない郊外の表情といったところだが、その南側に塊村状に展開する富吉地区の家並に入ると様相が一変する。土蔵を従え、塀に囲まれた敷地の広い農家群で、中には重厚な門に立派な中庭を持つものもあった。ハゼや綿花の栽培などで潤った名残なのだろうか。玄関先に表札などと並んで「養蚕実行組合」の掲示のある邸宅もあった。
 町並や伝統的建造物として保存するほどではないにせよ、豪農集落といった印象の集落風景は意外性に満ちており、今後も地元の方が意識され残していただきたいものである。
 
 
 



 
 

 
   
   

訪問日:2020.04.04 TOP 町並INDEX