東上野界隈の郷愁風景

東京都台東区<住宅地・商業地> 地図
 町並度 4 非俗化度 5 −関東大震災以後の復興型住宅が残る町並−







小島二丁目の町並 小島一丁目の町並。土蔵の残る珍しい風景。


 台東区はその名が示す通り武蔵野台地の東であり、山手の起伏に富んだ地形とは異なり平坦である。区域の東部に浅草を含み全体的に下町風情の濃い地域である。ここではあえてそれより都心に近いエリアの下町風景を幾つか紹介したい。
 この町並を歩くにあたり、戦災に遭わなかった地域が一目でわかる航空写真を参考にした。非戦災地区は濃く表示されており、この範囲を重点的に歩くと比較的伝統的な下町風景が残っていると推測できる。
「看板建築」の連なる一角
銅板に葺かれた外観の建物が多く残る。これは大阪の非戦災地区にも共通する。


 
 
 JR御徒町駅の東側一帯、台東・小島から鳥越にかけてまとまって非戦災エリアが固まっている。エリアの北端は3つの小学校が線的に並び、その南側が戦火を免れている。これは大正期の関東大震災を契機に防火帯として計画されたもので、いずれもその南に緑地を構えている。皮肉にもこれが空襲時に機能して、このラインより南の町並が生き残った。
 細い通りを中心にして一昔前の家並風景が多く残る。その特徴は @出桁形式の町家建築 A「看板建築」の商店 の2点である。多くは現代風のビル建築に建替っているため、@については連続した風景はほとんど見られないが、片身が狭そうにビルの間に挟まっている姿は哀れさを誘う一方、頑張って残って欲しいと思わすには居られない。
 またAの「看板建築」は切妻平入の家屋の前面から側面にかけて、コンクリートの胸壁を立ち上げた格好をした商家建築で、これは関東大震災の復興時から戦前にかけて、下町で大いに流行った建築様式であり、基本的には東京独特のものといえる。表面を銅板で葺いたものが原型である。看板建築が残っているということはここが戦前の町、戦災を受けていないということの証ともなる。
 少し北に向い入谷・下谷地区も非戦災エリアが大きく広がっている。ここは街路形態がやや不規則で入組んだ路地風景が一部に残っている。路地の中では、都心に近いことを忘れさせる静けさであった。
 町家が幾つか固まって残る風景も見られるが、特に保存活動も行われていないそれらはやがて更新され尽くし昔語りになるだろう。
 


 ※このページ文章作成は、ご案内いただいた野村万訪さんとのお話のみを参考にしています
※文章内容は「入谷・根岸の郷愁風景」と共通です。


訪問日:2004.10.11 TOP 町並INDEX