網田の郷愁風景

熊本県宇土市【産業町】 地図 
町並度 4 非俗化度 7 −幕府献上品でもあった網田焼の里−






網田焼の里資料館(左)と付近の町並


 網田地区は宇土半島の北部沿岸、国道57号が通り三角線の駅が設置されている。
 集落はやや内陸部に位置し、田園と緩やかに起伏する地形の中に家々が固まっている。現在の印象はひっそりとした小さな集落ではあるが、肥後細川藩に献上するほど有名な焼物の産地であった。
 寛政4(1792)年に藩の御用窯が置かれ、陶工を招いて焼物の製作が始められた。大名だけでなく幕府への贈り物として参勤交代時などに届けられ、網田焼として名を知られた。一説によると伊万里や備前などをも凌ぐ日本一の窯として名を馳せていたという。
 しかし30年ほどで藩の保護は打ち切られ、以後は日常の食器等の大量生産が主になり、使用する陶土も付近の粘土となり質的には低下していった。それでも明治・大正にかけても細々ながら生産が続けられたが、昭和初期に窯の火は途絶えた。
 集落の中心に「網田焼の里資料館」という建物がある。陶工の監督を務めていたという邸宅が修復・整備の上公開されており、煙抜きの越屋根を持つ厳かな外観の母屋と門、土蔵を従えた風格ある構えを見せている。周囲にも伝統的な構えの建物が散在的ながら残り、漆喰にまとわれた外観のものが多いこともあって古い町並的な風情が感じられた。
 









訪問日:2017.06.11 TOP 町並INDEX