肥後小国の郷愁風景

熊本県小国町【産業町・在郷町】 地図
 町並度 5 非俗化度 7  −小国杉で富を築いた町−
 



 
大柄な商家建築の見られる小国(宮原)の町並


 県の北東端、小国町は東側を久住連山、南は南小国町を経て阿蘇の外輪山に向う高原状の地形を示しており、熊本県ながら筑後川水系の上流域を占めている。一帯は木材特に小国杉と称される良質な杉の山地で、林業を中心とした産業、また杖立温泉を筆頭に温泉資源にも恵まれている。
 阿蘇郡の北端にあって中世には小国郷と呼ばれ阿蘇神社領に属していた。江戸期は熊本藩領ではじめ加藤氏、その後細川氏の領地となり、北里手永
(手永は細川氏の統治した行政単位)に属し小国会所が置かれた。前述のように杉を中心とした林業は、藩から奨励されたことで当地に根付いた。細川氏は各戸に25本ずつ苗木を配布し、植林するよう命じたという。林業の先進地であった大和吉野地方まで赴き技術を学ぶものもあり、多くの林業家と輩出した。
 また地理的に周囲からの街路が集結する位置にあり、物資も集まりやすいこともあり商業が発展、中心にあたる宮原
(みやのはる)には町場が発達した。
 この町がいかに賑わっていたかを示すたたずまいが、市街地の主に東部に見られる。妻入りで間口の広く二階の立上がりも高い商家風の構えが見られ、一部には連続的に建ち並ぶ姿もあった。土蔵造りも目立ち、裕福な商家が居を構えたことが伺える。中でも象徴的な建物が一角にある旧小国銀行だろう。昭和10年築で洋風の構えを見せ、R面取りされた位置に玄関を持つ。林業・農業など豊富な産業により預金量も多く、小国銀行は優良銀行であったという。
 付近は水の豊富な所で、街路から少し外れた所に「けやき水源」という湧水池があり豊富に湧き出している。阿蘇溶岩の隙間に水脈があってこの一帯で地上に出て来るということで、他にも水場があちこちに見られる。この水の豊かさも町の発展に大きく寄与したものである。街路から今度は山手に眼を転じると、富くじの道と書かれた小さな案内板がある。これは藩主一団の通行時に人馬の賃料不足に悩んだ会所が、藩の許可を得て地内の神社で富くじをはじめ、一番くじを当てた湊屋純左衛門はそれを独り占めにはできないと、脇道の坂とけやき水源までの道を石畳に改装したという。
 
 



 
   
 



 
旧小国銀行(S10)  もと旅館と思われる建物 
 

 
 町内には豊かな水の湧き出す箇所も多い その一つ「けやき水源」


訪問日:2023.09.25 TOP 町並INDEX