牛島の郷愁風景

山口県光市<漁村> 地図
町並度 5 非俗化度 10 −室積沖の島 かつては捕鯨も行われた−

牛島の海岸沿いの風景




 古くからの港町であった室積から定期船で20分ほど、上関半島の西に位置する牛島。現在は光市に属している。古くから牛の放牧が盛んで、そのため牛島と呼ばれるようになったとの説がある。
 島は北西部が凹んだ形をしており、風波の避けられるこの付近に集落が立地している。江戸期の記録『注進案』では129軒で、漁民82軒・農民37軒・商人9軒・家大工1軒という内訳であった。漁業は当初は近海漁業が主であったが、18世紀後半の寛永年間頃から遠海にも漁域を広げ、豊後や土佐・対馬・平戸沖方面で鯨漁も行ったという。
 また陸では織物や苫などが生産され、煎り海鼠など漁獲物の加工も盛んに行われた。また農業では麦や唐芋が栽培され、牛は30頭ほどを飼育していたという記録がある。このように漁業を中心に各種産業も盛んで、生活は裕福であったことがうかがえる。
 上関半島に守られるような形となり周辺の海域も穏やかで、集落は海岸部だけではなくやや面的な広がりを見せる。この部分を中心に島独特の密集型漁村集落が見られる。小高いところにある寺からは渋い鼠色の瓦の家々と海景を見渡すことができる。板壁・トタン壁などの漁家らしい家々が多いが、一部には洋風の外観を示す事務所のような建物、漆喰壁の商家風の建物も見られる。さまざまな産業で栄えた名残だろうか。但し、現在は無住となっている家もあちこちに見られ、多くの離島で共通している人口減少が続いているようだ。
 歩いているといたるところに井戸がある。多くは使われていないようだが水に乏しい島の事情を語っているようだ。或る井戸には協同井戸主として連名が刻まれた標石があった。現在は島内の地下水を用いた簡易水道が供給されている。












訪問日:2018.07.15 TOP 町並INDEX