日置川の郷愁風景

和歌山県日置川町 【港町】 地図 <白浜町>
町並度 6 非俗化度 10 −日置川沿いの木材で潤った港町−



日置の町並
 奈良県との県境付近より紀伊半島を流れ下る日置川。河口付近も広い平野を持たず、清流のまま太平洋に注いでいる。中上流部は古くから良質な木材の産地で、河口付近には木材の集散地が形成された。
 
 














 漁村としてはさほど発達しなかった代わりに商港としての性格が強かったようだ。日置浦と呼ばれ、河口には番所が設置され荷の改めが行われ、流域からは木材をはじめ薪炭がここから海路に委ねられ、帰り荷として他方から生活物資等が陸揚げされていたのだろう。廻船も立ち寄る港となり、江戸の後期には町並が形成されていた。
 紀勢本線の紀伊日置駅は町並中心の河口付近からは2kmほど上流側に設けられている。国道42号線や最近開通した専用道は集落近くを通るが、河口付近でもなお周囲を山地に囲まれたこの付近は周囲から隔絶されたような風情を持つ。町並が展開するのは右岸側で、海岸に近いほど家並の密集が見られる。
 細い路地が主体で、町家・商家建築が多く残り、つし2階の造りを保持しているものも見られることから一部はもしかすると江戸期まで遡るものもあるのかもしれない。1階部に格子が綺麗に残されているものも多く、古い町並として十分の質量を保っていた。日置川流域の木材の恩恵を受け、富を重ねて来た家々の名残なのだろう。町並として全く知られていないこの町だが、保存活動をするに値するものを持っており、地元の意識向上に期待したいところだ。
 海岸部は堤防こそ築造されているものの、近年になっても埋立が行われなかったのか、海岸部からいきなり古い町並が見られるのも少々不思議な感触であった。

  

訪問日:2015.12.28 TOP 町並INDEX