匹見の郷愁風景

島根県匹見町【産業町】 地図 <益田市>
 
町並度 4 非俗化度 10 −木炭及び製鉄で栄えた山村−





 匹見町は県の西部、中国山地の只中にあり高津川水系の匹見川とその支流によりわずかな平地が形成されるが、ほぼ全域が深山であり険しい地形を呈している。谷奥の袋小路のような地形にあり、冬期には積雪も深い。
 関ヶ原の役後一時幕府領となった時期があったが、江戸期の多くは浜田藩領下にあった。耕地に乏しく、焼畑農業が明治まで行われていたという。産業としてまず挙げられるのが豊富な森林資源を利用した木炭の生産で、中国山地一帯で盛んに行われたタタラ製鉄への需要も多く量産された。また製鉄に関しては、鉄山を経営するものも現れ、製品は馬により益田や峠を越えた山陽側の加計に持ち込まれた。木地屋も居住し、食器をはじめとした木材加工品を生産した。また紙の原料となる楮・ミツマタも栽培に適しており、紙漉業も盛んだった。
 そのように様々な産業に恵まれて、山深い地ではありながら住民は比較的裕福な生活であったであろうと推測される。
 町の中心は匹見川に支流紙祖川が合流する付近で、わずかな平地が展開する。紙祖川を遡る県道の東側に残る旧道沿いと、匹見川に平行する街路が古くからの中心街で、旅館や商店が見られ、小さいながらも一つの中心市街地を形成していた。町家・商家系の伝統的建物は少ないが、それら昭和の面影を色濃く残す建物があちこちに見られ、風情ある町並であった。
 しかし中国山地沿いでも過疎の波が最も激しい地域の一つで、賑わいは随分前に失われているようであった。現在は少し離れたところにある日帰り温泉施設への外来客が若干見られる程度であろう。










訪問日:2018.05.06 TOP 町並INDEX