英彦山の郷愁風景

福岡県添田町【坊舎街】 地図
 
町並度 4 非俗化度 3 −修験者が開いた宿坊群−
 




参道の最奥部にある奉幣殿 参道の風景




所々にかつての坊舎が痕跡を残している




参道の一角には旅館として営業されていた古い建物も見られる


 筑後と豊後の境に連なる山地の一角に英彦山がある。ここでは全国でも非常に数少ない例である坊舎・宿坊が町並的に展開しているところで、独特の宗教集落として今にその痕跡を残している。
 英彦山は三大修験山として知られ、古くから信仰を集めてきた土地である。山伏の集落と今でもいわれているのは、導師に導かれて英彦山に結縁した信者達が参道沿いに続々と居を構えたからであり、彦山参りの客をそれらに宿泊させ、それらは宿坊と言われた。
 下界からはどの方向からも急傾斜の山道となるこの地は修験の地というに相応しい。参道は石畳が敷かれた厳かな風景を展開し、英彦山神社奉幣殿までの間、時に石段になりながら長々と連なっている。そしてその所々には、かつての坊舎がその名残を留める。
 建物として残っているものは数えるほどで、現在では町並としての体をなしていないのが実情である。しかし参道の両端は階段状に石垣で囲われ、そこに例外なく坊舎が立地していたことは疑いの余地がない。参道からわずかばかり控えた位置に建っていたその慎ましい姿は、現在では木立に遮られやや見通しが利かないが、中には美しい前庭を従え、簡素ながら格式あるたたずまいを残し、今なお生活が営まれているお宅もあった。
 古い町並としての連続性はないが、その特殊な歴史性は貴重で、完全に風化してしまわないように何らかの策を講じてほしいものだ。
         
訪問日:2006.08.15 TOP 町並INDEX