薄香の郷愁風景

長崎県平戸市【港町・漁村】 地図 
 町並度 5 非俗化度 7 −入江の奥の小さな漁村 かつては遣唐使船の寄港も見た−

     





 薄香地区は市役所や平戸城跡とは丘陵を挟んだ反対側、島の西岸に位置し、深い入江の奥に家々が固まっている。
 家並は細い流れに沿うわずかな平地に固まり、路地風景が卓越する。漁師町の典型というイメージである。
 古くは遣唐使船が寄港したといわれ、また永禄6(1563)年4月17日付のイエズス会修道士の書簡には、平戸在住のキリシタンが生月島に赴く神父を見送るため、「平戸の後方に在る薄香と称する地」までついていった、との記録が残るという。
薄香地区 漁港の風景






 
 漁業は江戸初期より盛んで、殊に鯛の一本釣りが盛んに行われた。島内でも最も漁業が盛んであったとされ、また前面の入江は広い内湾を持つため、避難港としても利用され賑わったという。また長らく平戸島の北西にある生月島への渡船基地でもあったが、生月大橋開通後はその役割を追え、今では純粋な漁村として息づいている。
 小さな集落で、しばらく歩いているといつの間にか密集する家並を抜ける。しかし新しい建材を用いた家屋は少なく、典型的な密集型漁村集落といえる。中には格子を持つやや大柄な家もあり、漁獲や渡船業などで富を得たのだろうか。一部には精緻な意匠の持送りを軒下に持つ家もあった。
 坂道の一角には映画館の看板のある洋風の建物が残る。こういってはやや失礼だが、今では鄙には稀なというような佇まいである。実際現役だった頃、この町の賑わい度はどれほどの物だっただろうか。この建物は、ここをロケ地とした映画のために整備されたものということを、映画には今ひとつ疎い私は後に知った。 
 




       

訪問日:2018.01.02 TOP 町並INDEX