平沢の郷愁風景

長野県楢川村<産業町> 地図 <塩尻市>
 
町並度 6 非俗化度 6 -木曾漆器産業の中心地-





 

 平沢は南に2kmほどにある奈良井宿の裏町として位置づけられていた。奈良井は中山道木曽路の中で藩政期には最も大きい町場であり、宿場としても険しい鳥居峠を控えていることもあり繁栄を極めていた。ここにあえてこの平沢を取り上げるのは、宿駅以外の町で古い町並を残している、中山道木曾路では数少ない町であるからだ。
 今でも木曾漆器の名は高く、土産物の筆頭に上げられる民芸品である。この平沢は中山道に沿っているものの宿駅としての機能はない。中山道に代わる近代交通手段としての中央本線も贄川-奈良井と旧宿場に駅が設けられ、平沢に駅が出来たのは昭和初期であった。町を歩くと、江戸期に遡ると思われるような旧家が余り見られないのはそのためでもあろう。
 しかし、その家々の、少なくとも街道上ではほとんどが漆器の店であるという特異な町である。推測に過ぎないが、奈良井宿でも北側(下町と呼ばれる部分で平沢寄り)では漆器業・曲物などを営んでいた小規模な町家が多く、産業として最盛期だった明治期に奈良井の町が手狭になったため、平沢に移り住んで開業した業者も多かったのではないだろうか。明治から大正期らしい構えが目立つことからも、そうなのかもしれない。
 店舗の前に続く中山道は緩いカーブを描いており、そうした箇所では家々は街路に平行せず鋸状にデッドスペースを作りながら連なっている。
 国道沿いには車での観光客を目当てにした漆器の販売施設もできているが、平沢の市街地は静かであり、観光地的な色はない。豊富な木材を多用した家並を存分に味わいながら、小さな店を冷やかす散歩がこの町には似合う。









訪問日:2004.05.30 TOP 町並INDEX