小伊津の郷愁風景

  島根県平田市<漁村> 地図 <出雲市>
 町並度 4 非俗化度 10 −急崖に張付くような漁村集落−





小伊津の町並  小伊津の集落内はほとんどがこのような階段状の路地で占められている。




細い谷を駆け上るように家々が密集している。 山陰独特の赤瓦と黒色系が約半数ずつ分布する。




小伊津の町並 三津の町並(小伊津の西隣の集落)
 

 平田市は出雲平野の町という印象が強いが、北部は島根半島の山地を越えて日本海に接している。島根半島の裏側は国道や鉄道からも離れているため、点在する小さな漁村も新しい資本に侵攻されたような色はない。この小伊津集落もそうした漁村の一つである。
 この一帯は集落の立地にはかなり過酷な地形である。島根半島の山塊が海に没し、平野は全くない。したがって家々は斜面に張付くしかない。半ば立体的に二重三重の路地が斜面を駆け上がり、その多くの箇所では階段となっている。集落の東部ではそれでもしかし細長い谷間があって、家々を建てることのできる表面積が稼げている。
 このようなことから、家並も鄙びたものであると想像して探訪したが、意外にも古い建物は少なく、家々を見る限りでは古い町並とは言い難かった。集落が存在するには嶮しすぎる地ではあっても、背後の山をトンネルが貫通し、二車線の立派な道が接続していることを考えれば、狭い集落のことひとたび更新が始まれば早い。
 家々が比較的新しいのは昭和53年に全国に先立って実施された「漁村集落環境整備事業」のためと思われる。これは生活の基盤となる上水道、排水施設、住宅用地の整備などで、海岸の不安定なところにある住宅の移転なども含まれていたという。そうした意味で、ここは先進的な漁村なのだ。
 しかし、集落形態としては独特で、あえてここに掲載する。
 
 


訪問日:2005.03.21 TOP 町並INDEX