平田の郷愁風景

島根県平田市<商業町・港町> 地図 <出雲市>
 
町並度 6 非俗化度 5  −木綿商で栄えた商港 妻入りの町家が残る−




片原町の町並。妻入りで白漆喰・なまこ壁装飾が目立ち山陰の町並としては異質な存在です。





醤油や酒の醸造業が土蔵を従えて現在でも営業されていました。


 平田市は出雲平野の一角で、東部は宍道湖、北部は日本海に面しており、天台宗の古刹鰐淵寺、眼病者の信仰を集める一畑薬師など知名度の高い神社仏閣もあるが、出雲大社のある大社町に隠れた印象となっている。
 ここに古くから町がおこり、商業都市として発展したのはしかしこの出雲大社のお陰でもある。古くは13世紀、出雲大社参詣の近江商人がこの地を着目、斐伊川河口にある荒蕪地の開拓を地元住民とともに行った。干拓地はやがて綿花が栽培されるようになり、地の利を得て商業の吸引力から米や醤油、酒造業などが栄え、商港となった。
 現在かつての川港は平田船川に名残が見られる。水は汚濁しており残念であるが、家々の裏より川べりに直接降りられるような仕組となっていたらしく、一部の民家では船着場らしい石組や木杭が残っていた。この片原町では、大店の商家の横路地がそれぞれの屋号を冠した小路となっていて、それらも船川に突当たっていた。川は物資搬送の運河としてだけでなく生活の場でもあり、この船川を中心として町が形成されていたのだろう。明治初年の大火で街路が整備され、小路の多くは消滅したが一部は残っており、案内板が掲げられていた。
 町並はこの平田船川の北岸に展開する。現存する規模は小さく、圧倒する家並といえるほどではない。しかし造り酒屋、醤油屋の並ぶ町並は、一階は街路に並行だが二階部を斜に構えたねじりを持たせたような独特の構えが多く、この町並の一番の特徴と言える。旧家は妻入が多く、なまこ壁装飾が目立ち、瓦は石州瓦ではなく黒瓦が主流である。
 散策したとき、町中に「木綿街道」のポスターが目立ち、木綿を題材とした町づくりをはじめているようであった。





平田船川。かつて家の裏が船着場でした。

灘町の町並

 
※画像は全て2005年3月再訪問時に撮影したものです。

訪問日:2002.03.24
(2005.03.21再取材)
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