布部の郷愁風景

島根県広瀬町【産業町・在郷町】 地図 <安来市>
町並度 5 非俗化度 10  
−製鉄業で栄えた歴史を持つ山間の小さな集落−






  出雲地方の東部、山懐に布部の集落がひっそりと残る。国道が市街地を避けて建設されたため、そのまま保存されたような往時の町の風景が人知れず残っていた。
 松江藩の支藩広瀬藩領として江戸期の大半を経過し、布部村の中心は製鉄産業を中心とした活気ある町場だったようだ。中国山地一帯で盛んに行われた砂鉄採取とたたら製鉄は山間部の生活を潤すもので、ここでも家島家という製鉄業者を中心に鉱山業が営まれ、経済の核をなしていた。
 また数多くあった陰陽連絡の街道筋にもあたり、かれら旅行客の宿泊・休憩にも利用された。
 町並を歩いて印象的な建物が「鉱泉旅館」と書かれた古風な旅館と、下見板貼りの洋風建築の姿だった。端まで歩いても5分とはかからない小さな集落にあって、かつて人々の往来と滞在が盛んに行われたことを証明するものであり、歴史の深みを感じさせてくれる。
 街路には用水が流れ、幾つかの家々ではそれを軒先に引込んで鯉を飼って居られた。際立った伝統的な建造物があるわけではないが、周囲の集落環境や家並の連続性の高さから町並として高評価したい。








 

訪問日:2010.05.04 TOP 町並INDEX