日田市は大分県の西端にあり福岡県に接する。ここには日田駅を挟み南側の筑後川に近い隈町、線路を挟み反対方向の豆田町に古い町並を残している。
日田は天領という言葉と対句のように言われる。この天領(江戸時代の幕府の直轄地)は各地に存在したが、ここは群代(江戸幕府の官僚)が直接統治していた地であり、他の多くの天領の代官(地方官)統治のものとは格が違った。郡代が統治した天領は全国三ヵ所のみであり、幕府御用達の商人が興した町家群は今でも多く残り、天領の町といわれるゆえんである。
夏は特有の猛暑に見まわれる盆地の町である。この町をさらに熱気の渦に巻き込む盛夏の祭り、日田祇園祭が毎年七月に行われる。私が訪れた時丁度その開催日であり、その様子もお伝えしたい。
この町には天領であった経緯から江戸や京都の文化と触れあうことが多く、現在に継承されている。この祇園祭はその1つであろう。隈町・豆田町を中心に豪華な山車が出る。各町には山車の収納庫があり、それらで意匠を競い合っている様子が面白い。両町では細い道が多く、曲り角などでは男が十人掛りで屋根にぶつからぬように豪快かつ慎重な山車さばきが印象的だった。
町並は豆田町にもっとも商人町が残されているが、メイン筋はせっかくの家並が改装され軒並土産物等になっており、観光シーズンに郷愁を感じることはほとんど不可能である。その横道及び裏通りの豆田上町筋では落着いた古い町並を見出すことができる。また隈町周辺は温泉街ともなっているため密度は低いが、所々に栄華を示す旧家が残る。
ここは城下町でもあり、当地で三隈川といわれる筑後川で行われる鵜飼は、日隈城主宮本長次郎が岐阜長良川から鵜匠を呼び寄せたのが始まりといわれている。鵜飼、温泉そして町並とゆっくり一泊してみたい魅力がこの町にはある。
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