日和佐の郷愁風景

徳島県日和佐町【港町・門前町地図  <美波町>
 町並度 5 非俗化度 7 −海部郡中心の港町・薬王寺の門前町−



日和佐川左岸の港町の町並
 日和佐というと一番にイメージされるところが海亀の産卵が見られる大浜海岸だろう。海亀と対句のようにも言われ、それを目当てに訪問する客も多いが、一方で第23番札所薬王寺を訪ねる巡礼客も絶えない。この町は港町・漁村、そして薬王寺の門前町として歴史を刻んできた。








 港町としてのたたずまいは主に町を二分する日和佐川左岸の河口付近で見られる。木質感の高い平入りの伝統的な建物がある程度の割合で残り、古い町並が展開していた。そう多くはないが、独特の床几を備えた民家もあり、1階部分も比較的近代住宅的な改装を受けずに旧態を保っている姿が目立つ。
 日和佐浦と呼ばれたこの港は江戸時代には郡代役所と呼ばれる、徳島藩の出先機関が設けられていた重要な津だった。藩主が地方に巡察する際に専用の宿泊所として指定された邸宅もあり、御陣屋といわれた。沿岸海域の警備を担当する灘目付、漁獲を取仕切る浦方帳元、御鉄砲小頭などの諸役人もあり、海部郡一帯の政治的中心の色濃い港町であった。また住民は漁業に携わるものが大半で基本的には漁村的性格の強いものであったが、廻船業に乗り出す者も少なくなく畿内方面との物資の取引を行い、商業も少なからず栄えた。
 一方門前町としては日和佐川にかかる厄除橋より西側にその町並を展開させている。商店街ともなっているため古い建物は散在的で、所々に古い家々を残すに過ぎなくなっているが、視線の先の丘の上には薬王寺を眼にすることが出来、苦吟の連続である巡礼者は目的地に着いたと安堵の念を抱いたことだろう。漁家の建物が中心だった左岸側よりも大柄で間口の広い建物が多く、性格の異なる町であったことを感じさせた。
 




厄除橋を渡ると薬王寺の門前町が連なる

 

訪問日:2007.08.14 TOP 町並INDEX