北条町の郷愁風景

兵庫県加西市<市場町・街道集落> 地図
 
町並度 5 非俗化度 9  −陰陽の結節点を担った商業の町−


酒見寺門前の町並。この付近は小さな路地が入組んで、方向感覚が狂ってしまうほどです。境内には鮮やかな多宝塔があり一見の価値ありです。
 

 北条町は旧播磨国のほぼ中央、加古川市の北側に位置している内陸の町である。旧加西郡の中心をなす当地は、真言宗の寺院酒見寺の門前町としての歴史が最も古い。国の重文にも指定されている見事な多宝塔のあるこの寺の周辺は複雑に路地が入組んでおり、虫籠窓の旧家の残る風情ある家並が見られる。
 江戸期には陣屋も置かれていたことから在郷商業町的な発展を示すようになり、18世紀半ばには戸数225、人口1155人を数え、毎月6回の市が立っていたという。地理的にも播州と但馬地方の街道上でもあったため、物資の中継地として発展して行った。
 近世は綿織物業でも繁栄をみたところである。地場産業の盛んな地であったらしく現在でも町中には雑多な古い小売商の家が目につく。
 北側に伸びる旧街道沿いにも古い町並が残っている。もっとも、新しい住宅に侵蝕されて往時の姿をとどめる一角は少ないが、散見的に中二階形式、虫籠窓の町家形式の姿を認めることが出来る。一部本瓦、一階部分の格子の残る旧家もあった。また、袖壁も比較的よく残っており、家紋をあしらった装飾を施したものもあり、たった一軒だけであったが、袖卯建も見られた。
 地元住民に古い町並としての意識は淡いらしく、本来は連続した町並景観があったのだろうが、この家並を保存して行くにはやや遅きに過ぎる感がある。この町並も、消え行く過程にあるのかもしれない。


ツタに覆われた虫籠窓
旧街道沿いの家並。この界隈は比較的古い町並らしい姿を残していました。 袖卯建の備わった旧家。ただし総二階であり、比較的新しい建築年代のものと思われます。
土蔵に挟まった路地より街道を望む。このような絵になる情景もまだ残っています。 黒板塀の路地


訪問日:2002.06.02 TOP 町並INDEX