本郷の郷愁風景

広島県本郷町<宿場町> 地図 <三原市>
 町並度 3 非俗化度 10  −峠を控えた山陽道の宿場町−




 





本郷の町並


 本郷町は三原に流れ込む沼田川に沿う小盆地に開ける町である。藩政期にここは山陽道が通り、三原から西進する者にとっては安芸国最初の、そしてこれから控える険しい山道へ向っての峠下の宿場であった。
 沼田川左岸に開けた旧市街は国道とに取り囲まれ、また沼田川の堤防下にありはっきりとした目的がないと通過することもない位置にある。その分街中の道も狭いまま残され、山陽道時代の面影が比較的残っているといえよう。
 宿場時代は200軒余りの町家が建ちならび、旅籠や木賃宿を含め宿泊可能な家は70軒あった。広島藩は直営の本陣(御茶屋)を設置し当地に年寄以下町役人を置き運営を任せていたが、藩はここを無年貢地とはせず、大通行時には近隣の農村(助郷)26ヶ村から人足、馬を動員した。
 沼田川には水量の少ない9月から3月までは板橋が架けられていたが、その他の時期はかち渡りにより横断していたため、増水時などはこの本郷宿に留まることも多く、宿場町の発展にもつながった。また川は物資の輸送にも貢献していて、下流からは干鰯、浜灰、船材などが荷揚げされ、上流からは農産物がここを経由していた。また三次方面から忠海(現竹原市)への街道の中継点ともなっており、今とは比べ物にならぬほどの賑やかさだったことが想像される。
 古い町並としては多くは残っていないが、旧街道沿いには伝統的な平入り中二階、または総二階の建物が所々に残る。醤油醸造と書かれた古びた木製看板のある商家がこの町並を象徴しているようであった。一角には道標が往時のまま残っていて、街道集落であったことを今に伝えているようであった。
 




くぐり戸式の旧来の姿を頑なに保つ醤油商(2004年撮影)

※注記の画像以外は2023.05再訪問時撮影

訪問日:2004.09.12
2023.05.05再訪問
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