伊吹島の郷愁風景

香川県観音寺市<漁村> 地図
 
町並度 6 非俗化度 8 −イリコ生産で有名な観音寺沖の小さな島−





伊吹島の集落中心部 商家を思わせる建物も見られる
 観音寺の港から小型船で20分余り、伊吹島は周囲5.5kmほどの小さな島である。西に50kmほどのところに西瀬戸自動車道で連絡された島々があるが、その間はほとんど島がなく、瀬戸内海では比較的島の少ない海域である。









 わずかな畑はあるが江戸時代から多くを漁業に頼る島であった。その漁法は1本釣り、鰯の曳き網、鯛の縛網などで、幕末頃になると海老や小魚を家族労働中心で操業するものも増えた。大正になると五島方面や朝鮮半島沿岸など遠洋に向う漁民が増え、主に鯖漁を行っていた。
 現在島の特産となっている鰯のイリコ(煮干)はその頃より製造されはじめ、昭和に入ると遠方で漁を行っていた者も近海の鰯漁に回帰し、次第に産業として定着するに至った。
 島の地形は海岸沿いに平地はほとんどない代りに中心部付近は比較的なだらかで、最高所でも標高100mほどであり、集落は標高40〜70mの部分に立地している。港から急坂を5分も上れば小学校と神社の鳥居が見え、家々の連なりが始まっている。ここから東側の一角が集落の中心らしく、地形が平坦で比較的大柄な建物が目立つ。一部は入母屋屋根を持つものや、瓦を葺いた立派な門を持つ旧家、土蔵なども見られ、漁業で豊かな生活が築かれていたであろうことが伺えた。
 一方、周囲はやや起伏が目立ち細い路地が巡る迷路状となり、家々が密集している。石垣に嵩上げされた家々や、下見板張りの洋風の外観を持つものなど様々で、興味深い集落探訪ができる。尾根筋に出て北の方向を見ると、墓地を通して広大な海の景色を見渡せる。
 集落を歩くと、藩に陳情して掘削されたという井戸があり、その説明板を読むと、島独特の生活の厳しさを見るようだった。また集落内はメインの街路でも乗用車がやっと通過できるほどの幅しかないのに所々にバス停がある。その時は気づかなかったが軽自動車で運行されるのだそうで、これも島の交通、高齢化などの事情に柔軟に対応した結果なのだろう。



訪問日:2017.08.13 TOP 町並INDEX