川口の郷愁風景

宮城県一迫町<宿場町・武家町> 地図  <栗原市>
 町並度 6 非俗化度 8  -羽州仙北道の宿駅 立派な商家や酒蔵も残る-

 



 
金龍蔵の門構えと土蔵 



 一迫町川口地区は県の北西部、北側の秋田県境より流れ下る一迫川が開析した平地に沿い展開している。南側の鳴子温泉などのある江合川沿いの地区とは山地により隔てられている。
 川口地区は羽州仙北道(小安街道とも)の宿駅が置かれたところであった。この街道は奥州街道の築館宿から羽州十文字に至るもので、主に物資の輸送に使われ仙台・秋田間の主要な交易路となっていた。南東5kmほどの真坂宿から当宿を経て、寒湯番所を経て出羽に至っていた。
 「川口村安永風土記」によれば、宿場町は二町二一間の長さを持ち、上町・中町・下町さらに三町の新町、二町の東町から成っており、真坂宿までは本荷三六文とある。またこの土地は遠藤氏の諸拝領となっており、天和元(1681)年の「遠藤山城在所絵図」では宿場とともに家中屋敷が描かれ、侍屋敷60軒、足軽屋敷46軒、小人屋敷28軒が許されていた。「安永風土記」によると家数38に男94・女32とある。
 町の中央で街路が二度直角に折れており、そのことからも宿場町・武家町としての防犯上の対策だったであろうことがわかる。まず目につくのが銘酒・一ノ蔵の第二蔵である「金龍蔵」の佇まいである。厳かな門構えの奥には多数の土蔵が連なっており、赤いトタン葺きの屋根もあり迫力すら感じる風景だ。穀倉地帯であるこの付近では伊達家の御膳米も産出されており、「金田」と称されていたことが蔵名の由来と云われる。
 街道沿いを歩くと、物資の往来のほか豊かな穀物に恵まれ裕福な家が多かったのか、商家風の建物も多く目につく。特に金龍蔵から北側に街路の屈曲を過ぎると妻入りの非常に重厚な商家がひときわ異彩を放っていた。門構えは寺院を思わせるほど立派なもので、その奥には端正に整えられた中庭が望まれた。
 武家町らしい姿は見た所感じられなかったが、古い町並と呼ぶには十分な姿である。築館方面から向うと田園が続き大きな町もない中で、突然のように現れることも印象度を高めているようだ。地元の方々が町並や建物を意識されている様子はうかがえなかったが、その価値もあるように思われ、酒蔵や商家の建物を中心に保存・活用へと動かれるのも一興であろう。 
 
 


 


 
大柄な商家風建物が随所に見られる  
 



 
 

 

訪問日:2022.07.17 TOP 町並INDEX