田村町界隈の郷愁風景

岩手県一関市城下町・武家町 地図
 
町並度 3 非俗化度 6  −一関藩時代以来の姿がわずかに残る−  





 



 
田村町の町並(世嬉の一酒造の建物)


 県南の主要都市・一関は藩政期には仙台藩の支藩・一関藩による支配の中心で、西・東磐井郡、現在の宮城県にあたる栗原郡の37ヶ村3万石を領有していた。藩主田村氏はここに陣屋を置き、明治維新まで統治を行った。
 残念ながら市街地には古い町並としてまとまって残る箇所はない。しかし市街中心やや西よりの田村町付近には往時の姿を連想させる建物が残る一角がある。田村町という町名自体も田村氏に由来するものか。旧藩士宅があったことによるとの説もある。
 この界隈を象徴する建物が旧沼田家旧宅である。幕末に一関藩の家老職を勤めた家で、18世紀前半の建築と推定される。市は平成15年に全面解体のうえ修繕工事を行い、創建当初に近い形に復元工事が行われた。茅葺の特徴ある外観を有し、内部も極力当時そのままの建材を用い藩政時代そのままの姿に近づけるよう努力されている。現在無料公開され、常駐した係員から案内を受けることもできる。
 またそこから北側を見ると、大柄な土蔵群が目に入る。大正7年創業の世嬉の一酒造の建物で、通りに面した建物だけでなく広大な敷地に土蔵・石蔵群が見られ壮観だ。現在は酒造場は移転しているが、建物は食事処や売店等として利用され訪れる人も多い。
 通りの南側には尖塔が印象的な洋風建築の一関教会(S4築)が異彩を放つ。酒造の建物ともに登録有形文化財となっている。
 これらの建築財をもって、市はこの通りを「歴史の小道」と名づけ、整備に力を入れられているようで、古い町並というのとは若干異なるが歴史を語る物件が続けて見られ、貴重な界隈と言えよう。




一関教会(左)と旧沼田家

訪問日:2022.07.17 TOP 町並INDEX