一宇の郷愁風景

徳島県一宇村【在郷町】 地図  <つるぎ町>
 
町並度 5 非俗化度 9 −剣山を控える山間の町−




一宇の町並
 

 一宇は吉野川沿いの平野部から剣山山系に向う険しい谷あいに町が開けている。
 四国山地は地味ながらその地勢は嶮しく、幹線国道以外で縦断するのは容易ではない。特にこの剣山付近は険路の連続であり、現在でもある程度熟達したドライバーでないと縦走するのに困難を要するだろう。
 この一宇はそうした山岳地帯の入口に位置するところである。剣山は信仰の山として古くから崇められ、この町の奥に主だった集落がないのに一宇を通る街道の往来は少なくなかった。一宇街道とも呼ばれたのは巡礼客が多く辿ったことから名づけられたもので、峠下の宿場のような役割もあったという。
 後背山岳地を抱え、自然とここに諸山村からの物資が集まり在郷商業町が発達した。吉野川水系ではこれより南に一切町場が存在しないためその範囲は広大で、山から商品を卸してくる者もここで停泊を余儀なくされていたことだろう。そのようなこともあり山地としては意外なほどの大きな町場を形成していた。
 木地師や塗師などの産業も栄え、剣山北麓にあって一つの独自的な経済圏を築いていたところである。
 
 






 町の中心を貫く道路は国道438号である。しかし離合も困難なほどの細道であり、国道というには余りに脆弱なものである。一宇街道を踏襲しているものだが、その隘路はこの先剣山の麓に至るまで延々と続いている。しかしこの深い山間の地でも町家建築が今に残る古い町並があった。二階部正面に木製の欄干を施した家屋もあり、賑わいを示していたであろうことが想像できる。
 国道沿いからは嶮しい山岳部の斜面が見え、そこに集落がへばりつくように立地しているのが見える。四国山地の真骨頂をうかがえるようなところにある町であった。





訪問日:2012.09.23 TOP 町並INDEX