家島の郷愁風景

兵庫県家島町【漁村】 地図  <姫路市>
 町並度 4 非俗化度 8 −入江の奥深くに展開する家島諸島の中心集落−

  


 姫路港から30分余り船にのりたどり着く家島諸島は播磨灘の中央に大小40もの島々で構成されており、瀬戸内らしい穏やかな風景が見られる一方、造船業や採石も行われており、剛く武骨な風景も表情の一つである。




宮(宮浦)の町並 海岸沿いの一本内側にかつての生活道路が残る




宮(宮浦)の町並 




真浦の町並
 


 中心となる家島は家島本島とも呼ばれ最も大きな集落が開けている。北部が深く湾入し、港が立地するに優れた立地である。湾の中心には巨大な船、そして建造中の船舶も見え、一種独特の風景であるが、その一方湾の奥では漁船が多数舫われた活気ある漁港を中心とした佇まいとなる。
 家島の歴史は非常に古く、風土記や万葉集にも記され詠われており、中世には航路の要衝となり、港が発達している。その後航海技術が発達して陸地沿いに航路をとる必要性がなくなっても、周囲に島が少ないこともあって海路の拠点とされた。寛永期には姫路藩による番所が設置され、周囲の海上警備にあたっている。
 険しい山はないが平地に乏しく専ら農業より漁業に従事してきた。北岸の湾は西の真浦、東の宮浦の二つの集落により形成され、特に宮浦では奥深く入り組んだ湾に沿い細長く家々が密集した漁村集落らしい家並が残っている。港につながれた漁船、そして家々が比較的新しいというのが予想外で、漁業が潤っているのだろう。しかし一部では伝統的な旅館建築や木造の家並が残っており、密度が高いだけに風情を感じることは出来る。
 真浦地区は湾奥に向って若干の平地の広がりがあり、海岸部にとどまらず島の中央に向って家並の展開が見られる。表通りに面した家々はここでも新しく、古い町並という雰囲気ではないが、そこから派生する路地が縦横に巡っており、一部では土蔵や板壁を持つ屋敷型の邸宅が残存することで伝統的町並としての価値が見出せる。
 姫路そして阪神地区からも近い位置にあるからか、訪ねても鄙びた離島というイメージが全くない島であった。船便も多く、客層も離島の航路としては年齢層が若いのが印象的だった。
 


訪問日:2013.02.10 TOP 町並INDEX