平田の郷愁風景

三重県大山田村【宿場町】 地図 <伊賀市>
 
町並度  6 非俗化度 10  −伊賀街道の宿駅 商業も栄えた−








平田の町並

 平田は旧大山田村の中心部で、国道163号線に沿って大型店舗も立地していて、買物客の出入りが頻繁である。しかしその一本北側には国道沿いの近代的な風景とは正反対の町並が行き交う人の眼に触れないままに残っていた。
 この町並は伊賀と伊勢を結ぶ伊賀街道の名残であり、この平田は宿駅の置かれていた町であった。承応2(1653)年に指定され、伊賀八宿と呼ばれた宿場町の一つに数えられ、早くから商売も藩から許可されていたことから、町場として賑わいを見せていた。伊賀国山田郡の中心地として、また近江にも近い土地であったことから物資や文化の交流も多方面にわたっていた。上市という小字が残るのも、この町で商業が発達していたことを示す。この伊賀街道は、江戸後期からは参宮客により一般庶民の通行が頻りになって、この町も旅人が賑やかに行交い、宿を取る客も多かったのだろう。
 町並は東西1km近く続く意外な長さを持っている。それはこの町が宿駅のみならず商業町として街道上に家々が建ちならんでいった様子を見るようである。そして家々は平入りの形を取り、一部に妻入りのものも見られ、伊勢の影響が多少感じられる。
 中二階の背の低い建物も所々に見られるが、江戸時代にまでさかのぼる古い建物はほとんどないようで、外観上の古さはそれほどは感じられない。しかし端正な格子が1階正面にも原型をとどめているお宅が多く、古びた旅館も現役で営業されている。東隣の平松宿ほどの強い印象には及ばないが、規模の大きさと連続性の高さがあり、古い町並の匂いは濃厚に漂ってくる。 妻入りの大柄な建物のある少し西側が枡形になっていて、この辺りが町の中心だったと思われる。









 古い町並として認識されている雰囲気はこの町からは微塵も感じられない。しかし重要文化財に指定されるほどの民家があるわけではないが、家々の並びとしての景観は保存に値するものがある。このような町並が一番失われやすい。観光客を呼び込もうと考えるのは邪道だが、公費による最小限の町家の維持修繕、案内板の設置や民家の一部の公開、町並をテーマにした催しを時々開催する程度でよかろう。今の内に取組まれても損はないだろう。気付いたら古い町並がほとんどなくなっていたということのないよう願いたい。
渋い玄関先を持つ現役の旅館

訪問日:2006.10.06 TOP 町並INDEX