伊方の郷愁風景

愛媛県伊方町【漁村・港町地図
 町並度 4 非俗化度 9 −宇和海の豊富な鰯で栄えた町−




中浦の町並

 愛媛県の西部に細長く突き出した佐田岬半島、伊方町はその基部を占める町で、原子力発電所のある町としても知られている。
 北は伊予灘、南は宇和海に面し主要な集落は宇和海側に集中している。町の中心は湊浦と呼ばれ、西に小中浦・中浦と家並の連なりがある。宇和海側は海岸線の出入が多く、特にこの付近では深く切れ込み穏やかな内湾が入組んでいることで、ここに集落が発展したのだろう。
 宇和島藩領に属した江戸時代、伊方は鰯漁で発展し続けた。宇和海は豊富な漁場で、水揚された鰯は現在のように食用にされるのではなく、多くは干鰯といわれる農作物の肥料とされていた。この干鰯は藩の主要な財源であり、伊方は最大の干鰯の産地とされ専売品として取引されていた。
 藩の管理下に置かれていたこともあり伊方は富裕な漁家も多く、港に面して重厚な商家が多く立地していたのだろう、今でも湊浦地区や中浦地区には町家建築も見られる。一部には虫籠窓を残すような重厚なものも見られ、単なる漁村ではなかったことがわかる。
 明治から大正以後になると漁業のほかに杜氏など出稼ぎに出る者も増え、それは伊方杜氏とよばれるほど盛んなものであった。それも干鰯の行商など活発な商業活動による外部との接触により習得したものとも言われており、伊方の人々の向上心の強さを証明するもののように思える。
 町を歩いている限りでは、原子力発電所の存在とは全く無縁な豊かな海沿いの町といった印象であった。
 








湊浦の町並

訪問日:2010.07.19 TOP 町並INDEX