石鏡の郷愁風景

三重県鳥羽市【漁村】 地図 
 町並度 5 非俗化度 8 −志摩半島最東端 捕鯨で潤った集落−

             



 志摩半島の海岸線は出入りが激しい沈降型で、それが美しい風景を生み観光資源となっており、多くの客を呼び込んでいる。
 ここで紹介する石鏡地区は半島の北東部、伊勢湾の湾口を出外れたところにあり、海上を北進すると渥美半島の先端伊良湖岬に突当る位置関係にある。
 「いじか」と発音し、古くは伊志賀とも表記されていたようである。志摩国答志郡に属しており、生粋の漁村として歴史を刻んできた。特に捕鯨が盛んであり、一頭を捕獲すれば七浦が賑わうといわれた。石鏡をはじめ、周辺各村は共同して利益が公平に分配されるよう、協議の上掟を制定していたという。
 洋上だけでなく沿岸漁業もさかんで、アワビなどを採る海女も古くから存在していた。
 前述のように海岸線が入り組んで山がちな地形の為に陸路の発達が阻まれ、陸の孤島といった状態が長く続いており、鳥羽からの巡航船も外洋を経由するため確実性に乏しく、戦後道路が整備されるまでそのような状態だったという。今訪ねても、海崖上を羊腸とカーブを連ねて、その崖を下って集落に辿りつくといったアクセスであり、海から開けた集落であることがうなづける。
 平地はほぼなく、漁港は近代的に整備されているが集落の方は直ちに斜面を駆け上がる形となる。車輌が入り込める余地はほとんどない。向き合う家の宅盤の高さが随分異なっており、隣の屋根の高さに玄関口があったりする。海からの風は日本海側ほど強くないとは思われるが、それでも直接外洋に面しているため板貼りの木質感の高い姿が目立ち、古い建物の比率はそれほど高くはないものの集落の立地する地形を含め漁村らしい風情は感じられる。
 
 






 





訪問日:2013.08.13 TOP 町並INDEX