宝山寺門前の郷愁風景

奈良県生駒市<門前町> 地図 
 
町並度 5 非俗化度 4  −生駒山中腹に旅館街が展開する−
 


 生駒市は県の北西端、西は河内との境界をなす山地が控え、地図を見ても実際訪れても奈良盆地エリアとは一線を画した地区という感がする。
 近鉄線により大阪との結びつきが強く、近郊都市といったイメージも受ける一方、山手の地区には独特の町並も展開している。
 生駒山中腹にある宝山寺は生駒聖天とも呼ばれ、特に商売をする者に親しまれ多くの信仰をあつめた。古くは生駒山の南にある暗峠が河内・大和を結ぶ幹線路であったことからも参拝客も絶えず、門前町が発達した。実際の町名もまさに門前町と称している。
 生駒駅前から出るケーブルカーはわが国初、大正7年に開通したもので、その歴史からも賑わいのほどがわかる。その頃から宝山寺駅付近は旅館、土産物屋街が形成され、遊興色も濃かったという。大阪・京都など他府県からの参拝客も多く、料理旅館を中心に数多くの宿泊施設が立地した。生駒新地ともよばれる遊郭街でもあり、石段の参道のあちこちに芸妓が出入りしていたという。
 「観光生駒」と大書されたゲートあたりから旅館街が始まっており、その軒数は現在の参拝客の数に比較すると多いやに感じられる。旅館の一部には現在も客を歓待するような宿もあるというから、そのためだろうか。傍らには判断所・鑑定所なども幾つか見られ、一般の旅館街とは異なった雰囲気も感じられた。これらは商売人の信仰を集めた、また今でも集めていることを証明するもののようだ。
 坂道や石段に沿って展開する旅館群の佇まいは独特のもので、伝統的な構えを残しているものは少ないとはいえ、老舗旅館も少なくないだろう。貴重な町並の姿として残ってほしいものである。


門前町の中心付近 石段や坂に沿い旅館が多く見られる






 




宝山寺の参道


訪問日:2020.09.20 TOP 町並INDEX