今立(五箇地区)の郷愁風景

福井県今立町<産業町> 地図 <越前市>
 
町並度 6 非俗化度 7 −越前和紙の中心地−




定友町の町並




新在家町の町並





 今立町は和紙の里である。美濃・土佐などと並び、越前和紙の名は全国的に知られており、当町はその生産の中心地である。この地で和紙が生産されたことで、記録に残る最古のものは8世紀にも遡る。平安期には政府指導のもとこの越前の地に紙を増産するよう命じ、平野から山間部に差しかかる地形で紙生産に欠かせない良質の水が豊富であったこともあり、そのままこの今立に産業として根付いたようである。




岩本町の町並



 五箇と呼ばれる町の中心街から南東方向に位置する地区は、室町期より大滝神社の神郷として製紙業が続けられており、越前和紙の中枢といえる地区である。五箇と呼ばれるのは大滝・岩本・不老・新在家・定友の五ヶ村から成っていたからで、それぞれ製紙業を生業としてきた。江戸期には福井藩のもと、紙漉屋の数は増減はあったものの地区全体で150〜160軒を数えていたという。仲買人も多数存在していた。
 ここで産出される和紙は奉書(儀式等に使う上質紙)や紙の王と呼ばれた鳥の子紙など高級で、しかも丈夫なものであり各地から珍重されていた。背景には小国である割に寺院が多く需要が多かったことや、原料の楮(こうぞ)が豊富であったこと、そして業者が増えるに従い品質を競うようになったこともあったのだろう。

 この地域は全体に格式を感じさせる商家建築が多く、流石に越前和紙の中心として財を積上げたことがうかがえる。中でも定友地区には瓦屋根を葺いた壁が延々と続く豪壮な屋敷をはじめ、裕福な製紙家を思わせる邸宅が多く見られた。また南部の岩本地区では土蔵を従えた紙商宅が、細い流れや路地に沿い連なっており、山裾に寺社を配し風情ある町並が展開していた。
 地区の中心には和紙の里紙の文化博物館を筆頭に特産の和紙文化を外来者に発信する施設がある。観光駐車場には周辺案内地図があるが、博物館は訪ねても町並に足を向ける客は少ないようだ。


※文章の一部は「今立の郷愁風景」と共通


訪問日:2018.08.13 TOP 町並INDEX