伊那の郷愁風景

長野県伊那市<宿場町> 地図
 
町並度 4 非俗化度 6 −高遠城下や木曽路への峠道を控えた伊那街道の要衝であった−




西町(旧伊那部宿)の町並 


 伊那市は伊那谷北部の中心的な町で、西に木曽駒ヶ岳を仰ぎ、東に天竜川の流れを抱く風光の美しいところである。
 東には城下町高遠を控え、西には権兵衛峠を挟んで中山道木曽路へと連絡している。現在の市街地の本格的な発展は明治以降であるが、交通の要衝として古い歴史を持つ。
 中山道の塩尻宿から伊那谷を貫通し、三河に至る伊那街道がこの地を通り、天竜川の段丘上にあたる現在の西町付近に伊那部宿を形成していた。市街地の南側、段丘上に開かれた宿場街は丘の上の裏道のようなところにあり、やや見つけ辛いのが意外である。新市街地が旧宿場町とは離れた平地に発達したためだろう。
 宿駅としての町場は約300mと比較的小規模であり、南北端に桝形があるためやや閉ざされた街路区間という印象である。明治に入って新しい街道が段丘下に開かれたため街路や町割はそのままの形で残された。
 
南端の桝形の位置には重厚な井沢家住宅が本棟造りという、この地方独特の真壁を現した妻入りの構えを堂々と見せている。そこから一直線に北にのびる街路には、密度は濃くないものの所々に伝統的な建物が見られる。平入りであるがやはり真壁の目立つ佇まいであった。
 古い町並としての連続性は今一つといったところだが、歴史性、そして閉鎖空間的に展開するそのさまは独特の風情を醸し出していて、地元では伊那街道伊那部宿として案内板を設置するなど、意識された動きを示されているようだ。
 




井沢家住宅





訪問日:2011.07.18 TOP 町並INDEX