井波の郷愁風景

富山県井波町<門前町・産業町> 地図 <南砺市>
 
町並度 7 非俗化度 5 −瑞泉寺の門前町−



瑞泉寺 当日は大法要で賑っていた。


 瑞泉寺で知られる井波町は砺波平野の南部にあり、緩やかな扇状地上に町が展開している。この瑞泉寺は、京都本願寺直系の浄土真宗の寺院で、中世には蓮如による真宗の布教活動もあって信者が爆発的に増し、越中における浄土真宗の拠点として現在まで長らく位置づけられている。政治権力を持つほどとなったことから度々戦乱に巻き込まれ、一時は壊滅させられたが、江戸時代の復興により本格的に門前町が形成された。




門前町の町並




門前町の町並




門前町の町並 町並
 

 
 その再興の際、本家の京都の大工を多数派遣し、その建築技術を多く学んでいる。特に今でもこの町の伝統産業として息づく彫刻(木彫)は、この瑞泉寺の再建がきっかけとなって広まったものだ。なるほど今瑞泉寺の山門その他を見ると、その怪奇ともいえる彫刻模様に驚かされる。建築物という域を超えた物を感じる。今でも地場産業として確定的な地位を保つ彫刻は、この瑞泉寺の建築群を訪ねることでその起源を間近に見ることができる。
 町場としても在郷町として認められ物資が集積し、商売を許された。年貢米の収納所も置かれている。また養蚕も盛んで、一時は加賀藩内最大の絹織物生産地であった城端に迫るほどの生産量があった。
 瑞泉寺の山門前から一直線に門前町の町並が展開する。山門に向け緩やかに登り勾配になっているところがいかにも門前の町並らしい。そして、それらの建物は伝統的な建築物で構成されていて、平入り切妻造りの中二階建てで、袖壁を有し、軒庇には古色蒼然とした幕板が設置されているものもある。この幕板には雨風や雪を防ぐもの、または祭礼の時の装飾を取り付けるためのものなどと様々な説があるが、門前町という性格上、もしかすると後者の目的だったのか。商店となっている建物が多く、1階は本来の姿ではないものも多いのだろうが、古い町家の連続性が感じられ、重要伝統的建造物群保存地区にも匹敵する町並だ。坂道にあるから家々のラインが少しずつ段差になっているのが面白かった。木彫の町だからかどうかは解らないが、この地域の他の町に比べ木材が贅沢に使われているようで、軒庇の板材も太い。中には屋根裏の出桁より金具で吊られ、信州木曾路の町家を思い起こさせる家屋もあった。
 実はこの町並は7年振りの再訪であったが、前回に比べ随分門前町は賑っていた。前回が冬だったからではなく、この日が何十年に一度とも言われる瑞泉寺の大法要の日に当たっていたのである。蓮如上人500回忌・浪化上人300回忌とのことで、町並には多数の参拝者の往来が絶えなかった。北陸最大の木造建造物といわれる本堂では法事の最中であり、多数の信者が集合しており、また「稚児練り」に参加するらしい着物姿の子供たちが見られた。本来の落ち着いた町並を見られなかったのは残念だったが、逆にこのような貴重な日に訪問できたことは幸運ともいえる。
 

訪問日:2005.10.10 TOP 町並INDEX