松川の郷愁風景

長野県松川町宿場町・街道集落 地図(大島) 地図(上片桐)
 町並度 5 非俗化度 8  −伊那街道沿いの牧歌的な町並−

 松川町は下伊那郡の北部に立地し、中央自動車道のインターも設けられ比較的交通の便が良い。
 伊那盆地(伊那谷)では主要な交通路は天竜川の右岸に開かれ、高速道をはじめ幹線国道も飯田線もすべて竜西と呼ばれる川の西岸に敷かれている。




大島の町並


 古くは伊那街道が町域を縦断し、二つの宿場町が設置されていた。大島宿と片桐宿で、かつては大島村・上片桐村と独立した自治体であった。
 両宿駅とも歴史は古く、文禄2(1593)年に飯田城主によって建設されている。
 大島には中世に大島城が存在したが、天正10年(1582)織田信長の攻撃により落城している。天竜川の河岸崖上に建設されており、現在でも土塁の一部が現存する。宿場町建設にあたり、藩は段丘上の伊那街道沿いに町の中心を移している。
 片桐宿の地名は古くは片切と記され、これは田切地形による地名と考えられている。地区の南側に片桐松川が段丘を流れ下り下刻谷を形成している。宿駅に指定されるにあたって周辺7ヶ村が統合され宿場町片桐が成立しており、同時に幕府領となっている。この地区の伊那街道は、河岸段丘上の比較的平坦なところを縦断しており、地形に従って緩やかに曲線を描いている。陣屋も設けられ政治的な中心地でもあった。
 両宿とも本陣が設けられたという記録はないが伊那街道で盛んに行われた中馬制度により賑わい、また大名行列などの大通行の多かった中山道とは異なり善光寺や伊勢へ向かう旅人が多く利用し庶民の道として親しまれていた。町並を歩くと、町家が連続した姿ではなく敷地がゆったりしていて、街道沿いに緑が多く目につく。塀に囲われた厳かな邸宅もあり、また本棟造りという裾野の広い妻入りの伝統的な建物も目立った。
 生活の色も濃く感じられる街道沿いの佇まいで、背後の山々を望み爽快感を覚える二つの街道集落であった。
 
 








上片桐の町並

訪問日:2011.07.18 TOP 町並INDEX