伊那市の郷愁風景

長野県伊那市【商業町】 地図
 
町並度 5 非俗化度 6 −鉄道開通後に発達した昭和の雰囲気濃厚な市街地
 







看板建築の連なる国道沿い(通り町)の町並


 伊那盆地北部の中心的な町である伊那市は古くからこの地方の要の位置を占め、東には城下町高遠を控え、また中山道塩尻宿と三河地方を結ぶ伊那街道の宿駅、さらに権兵衛峠を経由し木曽地方へ向う街道が分岐するなど交通・流通の拠点となっていた。
 明治に入ると幹線鉄道は木曽谷を経由することとなったが、飯田線の前身である伊那電気鉄道が早くも明治45年辰野とを結び、大正に入ると飯田まで延伸されて伊那谷の大動脈となると、伊那街道より東側に建設された駅周辺に市街地が発達した。
 飯田線伊那北・伊那市駅間の西側が現在の市街中心となっており、メインは国道146号沿いとなる。中でも那市駅近くの入船・通り町付近は賑やかさを感じ、以前訪ねた段丘上にある旧街道沿いが古い家並を従えてひっそりとしているのとは対蹠的な雰囲気を感じる。
 国道沿いで特筆されるのが看板建築と呼ばれる建物が連続しており、独特の町並風景が展開していることだ。看板建築は二階正面にコンクリート製の胸壁を立ち上げ、その部分に看板を取り付けたり屋号を表示したりした主に店舗建築のことを示し、建築用語でもなくその外観から便宜的に呼ばれているだけである。そのため姿も様々だ。地味なもの派手なもの、立ち上げ高も意匠も種々雑多で、その不統一感がまた興味をそそる。街路が緩やかに曲線を描き、次に現れる町の風景への期待感が高まるのも良い。
 看板建築は狭義では関東大震災の復興時に東京とその周辺で建てられたものを指すが、それを模倣してか比較的全国の広範囲に見られる。しかしここのように町並的に連続した所は珍しく、その面で注目されることもある。この伊那市の看板建築群もネット等で話題になっているのを時折見、また実際訪ねると地元の方々が意識されている色がうかがえる。
 なお国道から南側は繁華街となっており、そちらにも昭和的な飲食店街の展開があった。一方北側は旅館や割烹などが散在しており、また異なる雰囲気を残していた。この付近はかつて遊興の地区であったとされる。




国道北側の町並 旅館や料理屋などが散見される




入舟地区の商店街




飯田線の線路近くに見た特徴的な建物


訪問日:2021.10.10 TOP 町並INDEX