因島土生・田熊の郷愁風景

広島県因島市<港町・農村集落> 地図(土生) 地図(田熊)<尾道市>
 町並度 4 非俗化度 10 −廻船業と農漁業双方で発展を見た−

 因島は瀬戸内海の中ではやや大きな島だ。土生は島の中でも中心的な町であり、商業施設もあり島嶼部各地に向う航路もここから出る。
 この島は中世には村上氏による水軍の本拠地ともなり、土生港も拠点のひとつだったという。江戸時代には備後国御調郡に属し、北に接する田熊とともに半農半漁の集落であった。
 土生の町並  




田熊の町並
 
 一方で廻船業に従事する者が多かったのは水軍以来の海に生活の糧を求める生き方が定着していたからだろう。記録では土生で86隻の廻船を有していたとされ、大坂方面へ物資を搬送し取引を行った。
 農業としては平地の少ない島の集落ゆえに水田は乏しく、畑作が中心で田熊では柿が有名であった。また製塩業も行われた。農民も農閑期となる冬場は漁業や海運に従事するものが多かった。その一方で漁業を専業とする村民は少なかったようだが土生地区の北にある字箱崎は古くからの漁村集落である。
 明治以降は造船業が発達し、大正期以降次々とドックが建造され労働者が集い町は急激に賑わいを増した。
 土生地区を歩くと町の中心は商業地となり商店街、繁華街が展開している。店舗に混じって所々に町家風の建物が挟まる程度であり、古い町並らしい風情は乏しかった。むしろ田熊地区により町並的風景が残っていた。詳しい歴史的背景は知らないが、農漁村とはいいながら中心部では商家も立地していたのだろう。造り酒屋も見られることから、土生とならび小さな市街地を形成していたらしい。
 島の町に展開する地味な印象の町並で、保存に値するほどの質や量でもないため、近くにはここで紹介する風景も全て変ってしまうかもしれない。
 




田熊の町並




 
土生の町並

 

訪問日:2008.11.09 TOP 町並INDEX