三重県伊勢市【門前町・花街】 地図 町並度 4 非俗化度 6 −伊勢参拝の精進落しで賑わった面影が僅かに残る− |
唯一残る旧妓楼建築・麻吉旅館 自らが古い町並を演出している | |
古市地区は伊勢市中心部より南東側、外宮と内宮との間の少し小高いところに展開する。 もともとは人家が少ない地区で、農村集落だったが、江戸時代には伊勢神宮への参拝客が急増したことから急速に町として発達した。伊勢内宮の門前町の一部ともなり、とくに遊興地としての色を濃くしていった。既に18世紀後半の天明の頃には妓楼70軒を数え、芝居小屋も2箇所あったという。 お蔭参りと呼ばれる伊勢参拝の流行の後押しがあったのはもちろんのこと、当時の参拝客に、参拝後遊郭で遊ぶことが精進落しになるとの考えがあったことも大きいだろう。何しろこのような遊び方が公然とそして当然のように行われていた時代だ。 一角に「麻吉」と看板が掲げられた伝統的な建物がある。古市地区に現在残る唯一の茶屋・妓楼建築で現役の旅館として営業されている。 天明2(1780)の絵図には既に示されており、往時は常時30名もの芸妓を抱える代表的な大料理店であった。 台地上の通りからは建物の一部しか見えないが、崖の際に建てられており斜面に沿って多くの宿泊棟や土蔵などがある。崖下の幹線国道に接する位置まで旅館の建物が連なっており、その比高も10m近くに及ぶ。そして敷地内の坂道や階段に沿って、自らが古い町並を形成している。 麻吉旅館の前を通る丘の上の一本道はかつて賑わいを極めたところだが、現在は普通の住宅地となっており、わずかに横道に二階部の欄干が残る家屋が三軒される程度である。 この麻吉旅館がなくなってしまうと、古市の遊興地としての面影は完全に失われ過去のものになってしまうだろう。 |
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わずかに残る枝道沿いの佇まい |
訪問日:2016.06.05 | TOP | 町並INDEX |
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