神社の郷愁風景

三重県伊勢市<港町> 地図
 町並度 4 非俗化度 8 
−かつては諸国の廻船や参宮客を受け入れ賑わいを極める港だった−










神社(神社港)の町並


 神社(かみやしろ)地区は伊勢市内を流れる勢田川の河口部左岸側の集落で、すぐ下流で五十鈴川が合流し深い入江のような地形となっている。
 江戸期には伊勢宮の外港として重要な役割を持つ港町だった。廻船業が発達し、港は諸国からの商船が頻繁に発着した。享保年間の記録では8隻の廻船を所有しており、海運業者も多かった。また造船技術にも定評があり、近隣各国より名声を得ていた。
 港を基盤に海産物・塩・魚・醤油などを取扱う問屋も発生し、河崎地区とならんで商業町として発達した。
 また、駿河から三河にかけての参宮客は海路を用いた方が距離が近く、この神社港は参宮港としての役割も持っていた。最盛期には船宿26軒をはじめ、船娼51を有するなど遊興地的な色彩も濃厚なものとなっていた。
 船での参宮客は決して少ない数ではなかったようで、東海道の吉田(豊橋)以西の宿場が衰微するということで幕府からの吟味を受けた事もあったという。それに対し交通の利便性から自然と上陸客が増えているだけで特に東海道筋で宣伝はしていない旨を主張し、お咎め無きを得たとのことである。それほど勢田川の舟運は発達していたのである。
 地図を見てもこの地区は路地が複雑に入組んだ様子がわかり、古い町であろうことがわかる。それら小路に沿って妻入り、板壁という伊勢様式の建物が見られる。連続した古い町並は少ないが質的には河崎等で見られるものと同様である。
 現在は市街中心から外れ、商港・参宮港としての機能を終えて久しく、人通りも少ない静かな佇まいであった。

訪問日:2016.06.05 TOP 町並INDEX