板鼻の郷愁風景

群馬県安中市【宿場町】 地図 
 
町並度 4 非俗化度 8 −街道の裏手に往時からの水路が巡る町並−




 
板鼻の町並
 
 
 城下町高崎から信州側へ向って最初の宿が板鼻である。安中の市街地からも離れており、静かな街村が今に残っている。
 中山道の前身・東山道時代は現在位置よりやや山手にあったが、慶長9(1604)年に今の位置に街道が付け替えられ、宿駅・板鼻宿が形成された。旅籠50余りを抱える大きな宿場に発展し、その多くでは飯盛下女を置いていた。茶屋と呼ばれた休憩所や商店も多く、周囲の宿場町と比較しても賑わいの度合は大きかった。
 その一つの要因が碓氷川の存在である。板鼻宿のすぐ西でこの川を渡っていたのだが、架橋どころか渡し舟の使用も許可されずに江戸期を通して肩車などの「徒渡り」に依っていた。江戸の防備のためといわれる。しかし増水することも多くそのたびに旅人は川留めに遭った。信州方面に向う客はここに泊ることになる。板鼻宿が繁栄した一番の理由といえよう。
 市街地化から逃れ幹線国道にも潰されることなく街路筋がそのまま残るが、伝統的な建物は余り残っておらず古い町並らしい風情には乏しい。むしろここでは街道の裏手にそれを求めることが出来る。豊かな流れを湛えた水路が巡っていて、心地良い水辺の散策ルートといった風景が展開していた。生垣や板塀・竹塀などが水の風景と調和している。これは板鼻堰と呼ばれ、碓氷川から取水している中山道現役時より開削されている水路で、灌漑用水・生活用水として永きに亘り使われてきた。今でも各家に引入れて、鯉などを飼育している風景が多く眼に入った。
 ここで宿をとった旅人はこの流れの音を耳にしながら一日の疲れを癒したに違いない。
 

 
 




板鼻の町並 街道裏手の旧板鼻堰の風景




街道裏手の旧板鼻堰の風景

訪問日:2008.10.12 TOP 町並INDEX