斎島の郷愁風景

広島県豊浜町<漁村> 地図  <呉市>
 町並度 4 非俗化度 10 −安芸灘の中心に位置する島 いつまで集落としての命脈が保たれるか−



 瀬戸内海の中央、本土から陸続きとなっている豊島の南約5kmに位置する離島である。明治22年までは斎島村という独立した自治体であった。
 面積は0.7km2と小さく、島の北岸に集落が立地し1日5便の定期船で結ばれている。
定期船の船着場の光景




斎島は空家の目立つ集落だが煉瓦塀が比較的多く見られるなどの特徴もある




神社より見渡す集落風景






 斎島の名は、古くから瀬戸内海を往来する諸船そして近隣の島の住民より、神霊の宿る神の島として崇められたことによるものとされ、中世初期頃までは聖域のひとつとされてきたのだという。また南西に位置する安居島とともにこの海域を行き交う航路の目印とされた。
 漁業によって生計を立ててきた島で、特徴的なものとしてアビ漁がある。春に北方からこの海域に飛来する渡り鳥で、その習性を利用して鯛、スズキなどを漁獲した。 
 小さな船着場に着いて集落に入る。狭い島ながら集落付近は平地もあり、海岸に平行に立地する家々と、背後の山の麓に沿って連なる家々との間に耕地も見られる。ただし、『芸藩通志』では戸数65・人数285を数えているが、今見られるそれらの多くは空家であった。屋根が崩れ什器が散乱した光景などを見ると心の痛むものがあった。
一方、漁業のみを生業としてきた割には立派な外観の建物が眼につく。瓦を乗せた門を構える家、煉瓦塀を巡らす家。煉瓦は集落で比較的よく眼についた。
 帰りの船便の時間が近づくと、高齢の住民の方が一人港に向われていた。確か船を降りたときにも眼にした方と思っていると船着場で切符の販売を始めた。船会社から委ねられているのだろう。すこしお話を伺ってみると、廻船業を営む家もいくつかあったのだという。構えのしっかりした家々が見られるのは、そのためなのだろうと納得した。
 しかし住人は10人余りとのこと、集落としての体裁をいつまで保つことが出来るか。少しでも後のことであってほしいものだ。

訪問日:2019.01.14 TOP 町並INDEX