岩国の郷愁風景

山口県岩国市<城下町> 地図
 
町並度 5 非俗化度 7  −橋の反対側 観光客の訪れない穴場の町並−





 錦帯橋南詰の旧商人町(岩国一丁目)の町並 左は旧国安家


 岩国市の現在の中心は岩国駅の西に隣接する地区で、商業・行政の中心施設もほとんどこのエリアであるが、明治時代までは錦帯橋に近い地区(西岩国駅周辺)であった。この町も城下町から工業都市へと顔を変えたが、この旧市街地は、古い顔である城下の町並を濃厚に伝える地域も残っている。
岩国二丁目の町並



岩国一丁目の町並



もと遊里を思わせる一角もある(岩国二丁目)★
 

 吉川氏の城下町であったこの一帯は、錦川を挟み北側の城山麓の横山地区が政治の中心であり、藩の主要な施設や重臣の屋敷が立ち並んでいた。今は錦帯橋を中心とした観光地の一角で、吉香公園として整備されており訪問客が絶えない。今でもごく一部であるが長屋門や旧宅が残っている。
 たいていの観光客はこれらを散策し、山城にロープウェーで登り城下の眺めを満喫して、それで帰ってしまう。山頂から見える、橋の手前の渋い黒瓦の一角に足を踏み入れる人は少ない。この地域は当時の町割がそのまま残り、玖珂町、魚町など旧町名も当時の碁盤目状の街路そのままに、今に残されている。
 この一帯は路地状の細道が巡り町人・商人町の風情が古い町並として残っている。街路は碁盤の目風に整備されお互い直角に交わり、町の強い計画性が感じられる。錦川に近い位置にある国安家は江戸期に鬢付け油を商い、19世紀半ばころの建築と見られこの町並を代表する旧家。また地場の漬物老舗「うまもん」の建物も120年ほど前の建造といわれている。

 古い町家は多くが白漆喰に塗り込めでられており、虫籠窓のある旧家もある。また、ほとんど全て平入りであることからも、近畿地方を中心とする建築文化の影響が濃く現れている。妻入りが優勢な山口県の町並にあっては、やや特異といえる。
 西岩国駅に向う辺り(錦見五丁目)の町並 駅が町の表玄関だった頃の面影が所々に残る  




錦帯橋右岸側の吉香公園内(横山地区)の町並 右は中流武家であった旧目加田家

 

 
 この旧岩国地区の南端には岩徳線の西岩国駅がある。この線は柳井経由の路線が開通するまでは山陽本線であり、特に昭和のはじめにかけて岩国の表玄関であり、錦帯橋の観光客は全てこの駅で下車した。駅からこの城下町に向う一本道にもやや古い家並の姿が残っているのはそのためだろう。洋風の建物が多いのも、明治以降、昭和初期にかけて中心的市街地だったことを証明しているようであった。
 この錦帯橋南側の町並は、観光客で最も活気付く桜の開花時期にあっても訪ねる客はまばらで、常に静かな佇まいを保っている。良い意味でもう少し注目されてもよいのではと思う。橋のたもとから少し横道に入って、城下町の風情を味わいたいものである。

 

 

★印:2004年3月撮影
他:2008年9月撮影

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訪問日:2008.09 TOP 町並INDEX