大田の郷愁風景

島根県大田市【商業町(市場町)】 地図
 
町並度 5 非俗化度 8 −中世の市場から発展した町−




大森銀山に向う旧街道沿いに連なる大田町の町並




 脇道にも古い町並が残る

 

 近年世界文化遺産登録を遂げた大森銀山を受ける町として大田の町が開ける。実際の所大田市街地の方がはるかに商業が栄えまた市街の中心であるのに町の姿を全く知らないというのは本末転倒である。ここでは市街地の町並を紹介する。
 大田市駅や市役所の附近は近年に市街地化された新しい地区である。一方で市街地の東側は大田町と呼ばれる古い町で、出雲平野などからでもその秀麗な山峰を仰げる名山・三瓶山を源とする三瓶川によって両者は区切られる。
 大田町は古代は邑陀(オウダ)郷、中世には大田上郷・下郷と呼ばれ、それが江戸期に合併して成立したものだ。古くから市場町として知られ、約400年前の鍬市・竹市がその由来だという。北町・南町でそれぞれ寺社の祭礼のために催されていたささやかな市が、やがて統一され彼岸市として毎年春秋の二回盛大にとりおこなわれるようになっていた。大田市街地は、市によって形成されてきたといってよいほどであり、それは大森銀山の賑わいが大きく寄与していたことも間違いない。
 三瓶川に架る神田橋を南下すると徐々に古い町並が姿を現してくる。市街地といっても小さな地方都市のことゆえ一見町外れの印象であるが、家並は街路に沿い袖壁を持ったもの、出格子が保存されているものなどもあり、それらが連続性を高めて街路の両端に連なっている。この街路は現在こそ交通量が少ないもののかつては大森銀山や石見地方の内陸部とを結ぶ重要な街道だったのだろう。歩いていると銀山を観光した客を満載した路線バスとすれ違った。
 主要な街路に沿いながらも、国道9号線や国鉄の駅からは離れた位置にあることで、町並の古さが今まで保たれたのだと思う。昔も今も銀山から見ると脇役ながら、人知れず古く渋い町の姿を残していた。
 判官贔屓というわけではないが、もう少し着目されてもよい旧市街地の町並である。
 

 
神田橋付近の町並 天神の町並


訪問日:2007.11.03 TOP 町並INDEX