氷見の郷愁風景

愛媛県西条市【在郷町】 地図 
 
町並度 5 非俗化度 9 −金毘羅への道に沿い商業が発展した−
 








氷見の町並


 愛媛県東部の通称東予地方と呼ばれる位置に氷見の町がある。石鎚山の伏流水が湧く水都西条の市街地からは南西側、山裾が扇状地状に緩やかに傾斜している。
 国道11号線より山側の地区で、工業地域の連なる沿岸の印象とは大きく異なる風景が広がっていた。外観的に農村集落に近いその町並は、古くは金毘羅参りの参道の一部となっていたらしい。人の往来が多い参道沿いには種々の産業も集積していた。中でも有名だったのが紙の原料となる楮皮加工業であり、また背後の山地から切出された木材を取りさばく材木問屋が10数軒存在していたと江戸期に記録される。また町の北側には川港があって、材木等の重量物を積出すのに不自由なく、また他地方からの産物や生活物資も手に入れやすく、町は発展した。現在の西条市街の西を限る加茂川以西の19ヶ村を取仕切る大庄屋もここに置かれ、近隣の行政・経済的中心となっていたのだろう。
 現在でも営業を続ける古めかしく厳かな構えの酒造家、塀を巡らせた敷地の広い邸宅などが残り、狭い街路に沿い古い町並の雰囲気を高めている。間口の狭い町家が連続する、いわゆる都市型の姿ではなく、豪農屋敷風の建物が散在的に残る、長閑な風景が展開する。
 古い町並が話題に上ることの少ない東予地方にあって、この氷見は存在価値が高いものがある。






訪問日:2007.08.15 TOP 町並INDEX