出雲大東の郷愁風景

島根県大東町<在郷町> 地図 <雲南市>
町並度 3 非俗化度 9 −牛馬市でいしずえを築いた町−


 

大東の町並 表通りには古い町並らしい風景は僅かである


 大東町は斐伊川の支流沿いに広がる平地に町が開けるところで、木次線が通っているが幹線国道からは外れ、町は静かな佇まいである。
 中世初期には数多くの荘園が存在したという歴史深いところで、江戸時代に入ると中国山地一帯で盛んに行われた牛馬市の拠点ともなり、出雲の一大市場として頻繁に取引が行われた記録がある。幕末頃には衰えたが、この町は近隣の山村を後背地として抱え、農産物などの集散地となっていたようだ。
 旧市街地は街路がそのまま温存され、南側に県道がバイパス化の形で建設されたようで、歴史のある町並らしい匂いがあった。しかし多くでは更新され、また商店として改装された姿であり、古い町並としては失われていた。一部の商店に海鼠壁などの意匠が見られるに過ぎない。
 一方で脇道にはまだ幾許かの風情が感じられる。表通りは商家の家並、横道には小規模な商店や旅館などが立地していたのだろう。それらしい出で立ちの木造平入り建築が連続的に連なる一角もあり、辛うじて古い町並としての体裁を保っていた。
 木次線は今では零細なローカル線であり幹線交通としての機能は失われているが、大正5年に開通した頃(当時は簸上鉄道)は終点の町として大層賑っていたに違いない。木次線が大東町を通るように大きく東に迂回していることからも、ここが重要な町であったことを思わせる。




裏通りには風情ある町並風景も残る





訪問日:2010.05.04 TOP 町並INDEX