三沢の郷愁風景

島根県仁多町【市場町】 地図  <奥出雲町>
 
町並度 4 非俗化度 10  −谷あいにひっそり残る市で賑わった町−



 奥出雲地区の中心の一つ、三成の市街地から西に3kmほど、支流沿いに開けた小盆地といったところに三沢地区がある。中世には三沢氏の居城であった山が集落の西側にある。







土蔵を従えた大柄な商家建築も見られる三沢の町並
 松江藩領であった江戸期には春に二度の牛馬市、年末にも市が開かれ大変賑わったとされる。『雲陽誌』には、「長さ二町あり、四月四日五日、十四日十五日牛馬を売買す。十二月二十七日諸色の市を立つ」を記されている。
 幹線道路からも外れた小さな谷間に存在することに意外性を感じるというのが率直な印象である。戦後の昭和の大合併までは三沢村という独立した自治体であり、明治期には800人余りの人口が記録されている。産業は穀類や大豆、麻、煙草などの農業が中心で、酒・酢・醤油などの醸造業も盛んであった。
 家並は支流に沿った道沿いにやや街村的な展開を呈していた。思いのほか立派な構えの造りをした旧家が多く、古い町並と呼ぶに十分な姿を残していた。中には、事務所や店舗として再利用されている建物も見られた。
 印象的なのが家並から仰ぎ見る小高いところにある寺社の存在だ。殊にその名も三澤神社は733年に編纂された「出雲国風土記」に登場する仁多郡の10社のうち「神祇官社」という国が認めた神社として筆頭に記されたという大変格式・歴史を持つ社である。また集落の北にある蔭涼寺からは、整然とした家並を見おろすことができる。
 


三澤神社




集落を見下ろす位置にある蔭涼寺

訪問日:2022.06.04 TOP 町並INDEX