地頭の郷愁風景

岡山県川上町<在郷町> 地図 <高梁市>
 
町並度 4 非俗化度 10  −往来の結節点に発達した町場−






地頭の町並

 高梁市街から西側へ成羽川を遡り、その支流領家川に沿い地頭の町並が開ける。国道313号線で福山・井原方面から高梁方面へ向う道中にある小さな町である。町は国道から川沿いに袋小路のように細長く伸び、長らく大きく変化することなく残っているのだろう、伝統的な町家の建築がちらほらと残り、造り酒屋をはじめとした商家も散見される。一部には裕福な農家の風情を漂わせる塀に囲われた庭を持つ屋敷も残る。
 備中・備前の各町は江戸時代には所領が非常に複雑に入り乱れていて、この町も幕府領から旗本領まで何度も変遷を経ている。旗本水谷氏統治の時代に当氏の陣屋に組み入れられた代表的な土地として、地頭と名付けられたのが地名の始まりという。
 紙の原料である楮(こうぞ)や漆の集散地、また紺屋や酒造の株を持つものもあり、在郷商業町としてある程度の発展を見たようだ。井原・笠岡からの笠岡往来から、高梁城下に向う成羽往来と、備後東城に向う高山往来が分岐していた交通の要衝であったことも町場が発達した要因なのだろう。
 町の中心部にはわずかな商店が営業しているが、商店街というには程遠い雰囲気で、過疎化の進行により活気が失われているかに見える。かつての街路の要は、今は国道を通過する運転者にすら気付かれないほどひっそりと山あいの谷間に息づいていた。
 
 




 







訪問日:2006.01.22 TOP 町並INDEX