重要文化財の建物(11)

−御茶屋 志摩−

(金沢市東山)


 金沢市街の代表的な観光地の一つ、東山地区の茶屋街。江戸後期に加賀藩により茶屋が計画的に集められ、特徴的な遊興街として現在も状態よく残り、国指定の重要伝統的建造物群保存地区となっている。
 北陸新幹線の開通により、日中は雑踏とも言える賑わいを見せるその一角に、重文に指定された「志摩」がある。平成15年に茶屋建築としては唯一の重要文化財に指定された。
 
 お客は二階の客間に通され、そこで食事が供され、芸妓の演芸に酔ったのである。客層は城下の町人、そして文化人などで、遊興といっても琴や三弦、謡曲や俳諧、茶の湯など多岐に及び、芸妓のみならず客側にも高い教養が求められた。
 店は馴染みの客を大事にし、いわゆる一見さんお断りという形で紹介があっても新規の客がすぐに信頼を得るのは難しく、何度も通う必要があった。店の敷居は高く、また裕福な者の特権でもあったのだが、それだけに精算を全て後日払いとするなど、常連客になれば数多くの配慮を受けることが出来た。
 

 
 
 
 東茶屋街の町並 右手の建物が「志摩」




  
二階の客間 5つの座敷が設けられている 




奥の中庭まわりには凝った木製欄干が見られる




客間の赤壁 石室と呼ばれる地下室




台所もほぼそのままの形を保っている 右は客に出す際に使われた豪華な食器類


 客間の壁は弁柄のあでやかな紅色をしており、この赤壁も金沢の茶屋の特徴とされている。座敷の奥には中庭に接する木製の凝った欄干が見え、すだれ越しに涼しげな緑を眼に出来る。
 茶屋自体は調理する場がなく、客があると料亭や仕出し屋から取り寄せるのが一般的だった。この志摩では1階に台所があり、注文した料理を豪勢な器に盛り変えて客に出していたのだろう。漆塗りの豪華な皿や調度品が展示されていた。
 驚くのが台所付近に地下室がある点だ。石室と呼ばれ食品の貯蔵庫として使われ、井戸もあるという。

 贅を尽くしたという言葉が最も似合うこの茶屋の建物、貴重な文化遺産として大事にしていただきたいものだ。

 路地裏トップへ