重要文化財の建物

−八千代座−

(熊本県山鹿市)

 
 
抜群の存在感を見せる八千代座の建物
 
 熊本県北部に位置する山鹿は温泉地として知られ、また街道沿いで古くから人や物資の往来が多く、町の歴史は古い。
 街道沿いを中心に裕福な商家が集積し、現在でも古い町並として面影が濃く残っている。
 そのような一角に芝居小屋・八千代座がある。明治43年に建造され、現在も現役で使用されている大変貴重な建物である。観客席は正面の桝席、左右の桟敷席があり、桟敷席は2階にもあり正面背後に向桟敷を配したコの字型を呈している。
 博物館的見せ物ではなく現役であるため、各所の外見は古びてはいるが、全て現在も稼動している姿である。舞台下の奈落にある回り舞台を動かす構造、すっぽんと呼ばれる花道に取り付けられた昇降施設など今でも実際の演劇で使われており、当時からの石積で作業スペースや通路が確保されているさまは実に歴史の重みを感じさせる風景である。
 
 




  中でも最も見応えがあるのが天井部分の宣伝の数々だろう。一つ一つ手描きで、時代が反映された商品の数々。山鹿では最も人の集うところであり、ここに宣伝を出すことは、誇りに思うべきことであったに違いない。
 定期的に係員による案内が行われており、舞台裏の楽屋なども見学できる。山鹿を訪れたのなら、温泉や町並と同じようにこの八千代座にも足を向ける価値があると感じた。








 
廻り舞台下の奈落と呼ばれる空間には人力で舞台を回す構造がある(右上・左下)




天井にはさまざまな手書の看板が残る





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