重要文化財の建物

−旧高野家住宅(甘草屋敷)−

(山梨県甲州市塩山地区)

 
 
旧高野家住宅の主屋 二段の折上げ屋根が特徴だ
 

 甲府盆地の北東端を占める甲州市塩山地区。塩山の市街地は中央本線の北側に旧市街地が展開し、一部には伝統的な建物も散見されるが古い町並を残すには至っていない。そんな中で塩山駅のすぐ北東に特徴的な屋根が印象的な邸宅がある。「甘草屋敷」と呼ばれる急高野家住宅だ。
 この甘草屋敷という名称は当家が江戸期より甘草(カンゾウ)の栽培を行い幕府に納めていたことによる。享保5(1720)年、幕府の採薬使が屋敷内にあった甘草を見分したところ、その質の良さから幕府に献上するに相応しいと判断されその栽培・管理が申し渡され、同時に年貢と諸役を免除されたという。甘草は調味料や漢方薬の原料として現在でも用いられる薬草の一種である。
 薬草園から控えた位置に主屋があるのもいかにもそれらしい。外見上の一番の特徴は玄関の向って左側にある二段の突上げ屋根である。この地域では一般農家などでも良く見られるものだが、立上がりの高い屋根で二段となると大変見応えを感じる。屋根はもともと茅葺であったというが、現在は銅板に覆われている。
 内部は柱や襖で仕切られる造りとはなっているが現在は一体化した座敷となっており、大変広大で壮観だ。二階の棟まで一本で立上がる棟持柱も豪快で、これも見所の一つといえよう。
 主屋は昭和28年に早くも重要文化財に指定されているが、平成8年になって敷地内の蔵や小屋などが追加で重文指定された。

 
 




  
開放的な座敷空間と裏手の縁側




建物の中央には棟持柱と呼ばれる武骨な柱が貫いている




 訪問者にはお茶が出され、係の方から詳しい説明をしてもらえるが、余り時間のない中での訪問で、案内は短めにしてもらった。お茶には地元の銘菓などが添えられるのが普通だろうが、訪ねたのが9月だったからかブドウそれもひと房近くが出てきて、いかにも甲州らしいと感じた。
主屋前の甘草園




後に重文に追加された馬屋(左)と小屋


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