文化財の建物

−三宜楼−

(北九州市門司区)

 
 
港町を見下ろすような位置に聳える三宜楼の建物
 

 三宜楼は明治期創業の高級料亭で現在の建物は昭和6年築、門司港駅から南に500mほど、小高い所に威容を誇っている。石垣の上に聳えている木造三階の姿は重厚な雰囲気が漂い、一見して文化財級の価値のあるものとわかる。
 空港はおろか関門トンネルも新幹線もなき頃、門司は九州の玄関口として絶対的な地位であり、港や貿易、鉄道関係の機関や企業、官庁なども集中し、商談や社交のための料亭が多く建ち並んだ。その中でも最高級を誇ったのがこの三宜楼とされる。
 戦後に料亭としては廃業され、その後一時は解体や売却の危機にも瀕したという。しかし地元の有志が平成18年に「三宜楼を保存する会」を結成し、1年の間に約2000万円の募金と16000名の署名を集め、翌年には所有権を取得。その後北九州市に寄贈されて保存工事が行われ、現在は三階の一部を除いてほぼ往時の姿を取り戻した。
 最大の見どころは二階の大広間で、百畳間ともいわれる広さを持ち、かつては大企業などの顧客に向けて能や伝統舞踊なども頻繁に演じられていたという。それだけに舞台も広く、また下地窓と呼ばれる窓の意匠も重厚だ。現在も披露宴や法要などに利用されているといい、単純に保存されているより価値のあるものと思う。部屋の周囲には廊下が巡り、木製欄干が張り出しているのも料亭建築ならではの造りである。
 
 




 
百畳間ともいわれる二階の大広間 広い舞台は様々な演芸が取り行われたという






 


 
廊下や階段の意匠の一つ一つが凝っており それらを見比べるだけでも楽しいものがある 
 

 三階は俳句の間と云う座敷のみが公開されている。高浜虚子が滞在し俳句を詠んだといわれ、こちらも凝った意匠の丸窓、可憐さも感じる欄間など非常にこだわりを持った様子がわかる。訪ねたときはすべてを確認できなかったが館内全体で欄間や窓の意匠はかなりの種類にのぼるようで、それらからは最上級の料亭としての誇りが感じられるだろう。
 内部の見学は無料で、案内の方が在館されている時には一通り説明を受けることができる。(三階はガイドつきのみ見学可)。特に文化財に指定はされていないが、門司の歴史を今に示すものの一つとして一度は見る価値のある建物である。
 二階・三階の座敷からは門司港そして関門海峡が一望でき、それだけでも最高級料亭らしい立地であることがわかる。
 




三階の「俳句の間」


 


 
三階俳句の間周囲の窓の意匠


 


 
一階は食事処「三宜楼茶寮」として利用されている 


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