上賀茂の郷愁風景

京都市北区<社家町> 地図
 
町並度 5 非俗化度 4 −神職の住まいが形成する町並−
 



上賀茂神社境内の一風景 神社の東側に社家街が開ける 清冽な引締った神々しいともいえる空気が漂う




家々には土塀が巡らされ 樹木が生い茂っており塀が視線の主役を占める家並



 明神川にかかる石橋のある風景
 京都の市街地を賀茂川に沿い市域北部の山地に突き当たった辺りは、郊外の住宅地といった雰囲気であるが、御薗橋を渡った東岸に重要伝統的建造物群保存地区に指定された上賀茂社家街が、小川の流れとともに静かなたたずまいを見せている。多数ある保存地区の中で社家町はここだけであり、神官の住居のなす町並として極めて珍しいものである。本格的なものとしては他に大社町杵築(島根県-出雲大社)、奈良市高畑(春日大社)くらいのものであろう。
 この社家街の規模を見るだけでも、上賀茂神社がただならぬ存在であったことの裏付けだ。この神社は正式には「上賀茂別雷神社」で、「別雷」とは農村でいう水の神様、土地を潤す神であった。元はその程度の神社であったのが、平安京遷都後には伊勢神宮に継ぐ神格を与えられ、多数の神官の住まう地となった。
 
 現在の上賀茂の町並は、神社境内を流れ下った明神川沿いに、土塀に囲まれた独特の家並が見られる。各家の中庭にはこの川より水が引きいれられている。これは庭園に池を配するためだけでなく、「禊」(みそぎ・けがれを払うために水で身体を洗い清める神事)を行うためでもあった。主屋は流れに面して建ち、緩やかに弧を描く石橋が渡され、優雅な風景を作り出している。
 市内中心部の観光地区を外れ、この地区を散策して見るのも趣深い。足を伸ばすとかきつばたの美しい大田神社、沼地植物そして冬鳥の飛来地ともなる深泥池などもあり、そこに至る山裾の家並も落着きがある。



訪問日:2002.10.13 TOP 町並INDEX