上野間の郷愁風景

愛知県美浜町【農村集落】 地図
 
町並度 4 非俗化度 10 −伊勢湾沿岸の農村集落−












上野間の町並 路地に沿い黒板壁に被われた建物が随所に見られる渋い家並だ
 

 知多半島は伊勢湾と三河湾の間に細長く伸び、大都市近郊であるもののさすがに南部に位置するこの美浜町域辺りからは長閑な雰囲気も漂い始める。海岸線も工場群や埋立地がなくなり自然のままの海浜が残されており、休日ともなるとレジャー客も多く押寄せるところである。
 この上野間地区は町域の北西部、伊勢湾に面した町であり、この地域に独特の黒板壁に被われた家屋や蔵、倉庫などが密度濃く分布し、特徴ある町並景観をつくり出していた。 
 海岸部にあるから港町または漁村であろうと思いがちであるが、この上野間は漁業は海苔養殖程度で、養豚や養鶏、また酪農などが盛んな農村集落なのであった。そういう知識なしに訪ねたのだが、確かに狭い路地が続き土地勘のない者の車での進入は困難ではあるものの、連なる家々の敷地が広い。土蔵を従え塀を巡らし、また一部では長屋門を構えている。袋小路を辿ると、どこからともなく民家の庭先に入り込んでしまうこともあった。
 江戸期の記録によれば、家数245で牛馬が22とあり、黒鍬稼ぎと呼ばれる農業従事者が34・5人、酒屋が7戸などとあるが漁業に携わる者があるとは記されていない。尾張藩の蔵入地でもあったそうだ。
 海に面する漁村。これがこの町並の実態であるが、海岸線に立って遠浅の海を見ると港を作るには不適な地だったことがわかる。訪ねた時、漁ではなく潮干狩りが催され、地元の方が客の呼び込みに精を出されていた。

訪問日:2008.03.23 TOP 町並INDEX